Airbnb Japan公共政策の取り組み|2026年4月

民泊制度と規制の論点整理|二層構造と運用課題から読み解く政策設計とは?

Traveler in Japan
インバウンド観光の回復に伴い、日本では民泊をめぐる議論が活発になっています。観光庁によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は、9兆4,559億円(前年比16.4%増)の過去最高と推計(※1)されています。宿泊需要の拡大を背景に、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」に基づく民泊の利用も増えており、2025年10月1日から11月30日までの宿泊者数は、629,671人(前年同期比148.6%)(※2)と大きく伸びています。こうした状況の中で、既存住宅を活用できる民泊が宿泊需要の受け皿として期待されています。一方で、住環境への影響やトラブルなどを理由に、制度の見直しや規制のあり方をめぐる議論も続いています。2026年4月以降には、東京都渋谷区や江戸川区、京都市をはじめ、自治体による条例見直しや制度運用の強化が各地で予定されています。違法民泊への対応と制度運用の強化に向けて、自治体の監督体制や運用ルール、消防法関連の見直しが進められているのです。民泊をめぐる議論は「規制強化」という言葉で語られることが多いものの、その背景には観光政策、住宅政策、地域政策など複数の視点が関わる複雑な構造があります。本記事では、日本の民泊制度の基本的な仕組みや現在の規制議論の背景、そして今後の制度設計のあり方についてAirbnb Japan 株式会社 公共政策本部 本部長 大屋 智浩が解説します。※1 観光庁「インバウンド消費動向調査※2 観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況
【記事のポイント】
  • インバウンド回復に伴い、宿泊需要の受け皿として民泊への期待が高まっている
  • 民泊は、「旅館業法」「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「特区民泊」の三つの制度で成り立つ
  • 特に「国の法律+自治体条例」の二層構造で運用される民泊新法では、地域ごとの実情に応じたルール設計が重要である
  • 規制強化だけでなく、運用の実効性をいかに高めるかが重要な課題となる
大屋智浩  Airbnb Japan株式会社 執行役員 公共政策本部 本部長

Airbnb Japan 株式会社執行役員 公共政策本部 本部長大屋智浩

2016年にAirbnbに入社。ホストコミュニティによる「ホームシェアリングクラブ」の立ち上げ支援などを担当した後、現在は公共政策チームで、自治体・政府との渉外やロビイングを担い、規制緩和を含む公共政策分野に携わる。

民泊の規制とは?制度の仕組みと基本ルール

■民泊の基本と現在の民泊が広がった背景

民泊とは、住宅を活用して宿泊サービスを提供する仕組みのことで、インバウンド観光が拡大した2010年代以降、既存の宿泊施設だけでは需要に対応しきれない地域を中心に広がりました。ホテルを新たに建設せずとも、空き家や住宅を活用できる柔軟さが支持され、宿泊の受け皿の一つとして広がっています。
traveler in the house
民泊をめぐる動きの中では、事業者同士が連携し、制度やルールについて議論する業界団体も存在します。民泊仲介事業者などで構成され、Airbnbも参加している JAVR(※3) もその一つで、民泊の制度整備や政策提言などに積極的に関わっています。※3 JAVR:一般社団法人 住宅宿泊協会(Japan Association of Vacation Rental)。民泊仲介事業者などで構成される業界団体。民泊制度の整備や政策提言などに取り組んでいる。

■民泊に関係する主な三つの宿泊制度

現在、日本の民泊は法律に基づく複数の制度のもとで運営されています。そもそも「民泊」という言葉は特定の一つの制度を指すものではなく、宿泊形態によって適用される法律が異なります。さらに、各自治体が条例によって独自のルールを定めており、事業者はそれぞれの地域の法令に沿って運営する必要があります。主な制度は、次の三つです。一つは、ホテルや旅館、簡易宿所などが対象となる「旅館業法」、二つ目は一般住宅を活用した宿泊サービスを対象とする「住宅宿泊事業法(民泊新法)」。そして三つ目が、国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」です。それぞれの制度には、営業条件や運営ルールの違いがあります。

旅館業法

旅館やホテルと同様に営業許可が必要で、営業日数の制限はありません。

住宅宿泊事業法(民泊新法)

自治体への届出で営業できますが、営業日数は年間180日を上限として制限されています。

特区民泊

国家戦略特区に指定された地域で認められる制度で、営業日数に制限がなく、25㎡以上の面積・消防設備などの構造基準が求められます。
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このうち、一般の住宅を活用して民泊を行うための全国共通ルールを定めたのが、2018年に施行された民泊新法です。この法律では、民泊を運営する際に自治体への届出が必要になるほか、営業日数の上限を年間180日とする規定が設けられています。また、消防法令など安全面に関する要件や、近隣住民への配慮義務なども定められています。このように、日本における民泊の宿泊サービスは複数の制度によって成り立っており、どの法令に基づいた宿泊施設か、その地域でどのような条例が制定されているかによって、適用されるルールが異なります。また、こうした制度は単に営業を制限するためのものではありません。宿泊サービスとしての安全性を確保しながら、地域の生活環境との共存を図るためのルールでもあります。民泊をめぐる議論を理解するためには、まずこうした制度の仕組みを踏まえて考えることが重要です。

民泊規制強化の議論と制度運用の課題

■民泊規制強化が議論されている背景

近年、民泊をめぐって「規制強化」という言葉を耳にする機会が増えています。その背景にあるのは、インバウンド観光の回復による宿泊需要の増加です。訪日外国人旅行者の増加に伴い、特に東京、京都、大阪などの都市部では観光客が集中する傾向が強まり、宿泊需要は拡大しています。こうした状況の中で期待されているのが、既存住宅を活用できる民泊です。一方で、観光客の増加は、地域住民の生活環境に影響を与えることがあります。一部の地域では、騒音やゴミ、生活マナーに関する問題が指摘されるケースもあり、住環境への懸念から民泊制度の見直しを求める議論が広がっています。さらに、法令を遵守しない事業者の存在も大きな問題です。いわゆる違法民泊とは、法律で定められた届出や許可を行わずに営業しているケースや、営業日数の上限を超えて運営しているケースなどを指し、こうした運営が制度全体への不信感につながる要因の一つと指摘されています。このような問題が起こるケースは非常に稀なものの、制度の信頼性を担保するためには、さらなる法令遵守を前提とした運用体制の確保が重要です。そのため、Airbnbでは、許認可等のない違法な物件の掲載を一切認めていません。こうした状況を背景に、民泊をめぐる議論は社会全体の課題として広がりを見せており、制度の見直しや規制のあり方について検討が進められています。

■規制強化だけでは解決しない民泊政策の課題

民泊の課題に対して、宿泊サービスとしての安全性を確保し、地域住民の生活環境を守るためにも、一定のルールを設けることは重要です。ただし、民泊政策は「規制強化か・緩和か」という単純な二択で語れるものではありません。単に規制を強化するだけでは、法令を遵守する事業者ほど対応コストや手続き負担が増え、結果として参入や継続が難しくなる可能性があります。一方で、ルールを守らない事業者は、そもそも制度の枠外で営業しているため、規制を強化してもその影響を受けにくいという側面があります。そのため、規制だけを強めても、適切に運営する事業者が減少し、相対的にルールを守らない事業者が残りやすくなる構造が生じる可能性があります。

■地域の実情に合った民泊制度設計の必要性

さらに重要なのが、地域の特性に応じたルール設計です。都市部と地方では民泊の役割が大きく異なります。観光客が集中する都市部では生活環境への影響が課題になりやすい一方、地方では空き家活用や地域経済の活性化といった側面が重視されることもあります。そもそも民泊新法は、国が基本ルールを定め、その上で自治体が条例によって追加規制を設ける「二層構造」の制度です。例えば、住環境への影響を考慮して、特定の地域では営業できる日数をさらに制限したり、学校周辺などで営業を制限したりする条例を定めている自治体もあります。本来はこの仕組みを活かし、地域ごとに適切なルールを設計していくことが想定されています。
民泊新法のルール構造を図解し、国の基本ルールと自治体ごとの追加規制内容を一覧で示した図。
そのため、地域ごとの状況や住環境の違いを踏まえた制度設計が重要となりますが、実際には十分に反映できていないケースもみられます。その結果、地域の実態との乖離や、制度への不満が生じる可能性があります。

■民泊制度では運用の実効性が重要

民泊政策においては、規制強化を議論する前に、既存制度の執行をどのように強化していくかを見直すことが重要です。違法民泊に対しては、すでに行政処分を行う仕組みが整備されています。しかし、実際には人手不足などの理由から、多くの自治体で執行が十分に行えていないのが実情です。現在の議論では、規制の強化が先行しており、「今の課題は何か」「既存の制度をどう運用するのか」といった点が十分に議論されていないことが課題といえるでしょう。一方で、既存の制度を適切に運用することで、インバウンドの受け入れと地域住民の安心を両立させている自治体もあります。例えば、東京都新宿区では2025年以降、定期報告を怠った事業者や違法営業を行った事業者に対し、都内初の「廃止命令」や「業務停止命令」を相次いで発出するなど、「闇民泊」や騒音・ゴミ問題に対して行政処分を大幅に強化しています。地域住民の安心を確保しながら多様な人々を受け入れる環境を整えるという意味でも、制度の実効性を高める取り組みといえるでしょう。このように、民泊政策において重要なのは単純な規制強化ではなく、制度をどのように運用し、実効性を高めていくかという点にあります。制度の目的を踏まえながら、地域の実情に合った形で政策を設計していくことが求められています。

■デジタル技術を活用した民泊課題の解決

民泊の運用面を改善するという視点から見ると、デジタル技術の活用が一つの鍵となるでしょう。民泊をめぐるトラブルとしてよく指摘されるのは、騒音やゴミ出しなど生活マナーに関する問題、そして安全性です。これらの問題は、無人運営が多い民泊の特性や、地域住民との接点が少ないことが背景にあります。このような課題については、デジタル技術により一定の対策を講じることが可能です。例えば、騒音の問題については、騒音検知器を設置することで状況を把握できるようになります。騒音レベルを可視化し、一定の基準を超えた場合にホスト(※4)やゲスト(※5)へ通知を行う仕組みです。また、安全面では、カメラを活用した顔認証やパスポート確認、ログの記録などを通じて、本人確認を適切に行える仕組みが整備されています。宿泊者の身元が明確になることで、不正利用やトラブルの抑止にもつながります。※4 ホスト:プラットフォームを通じて宿泊施設を提供する人々※5 ゲスト:民泊の宿泊者
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一方で、「問題が起きたときにすぐ駆けつけられるよう人を常駐させるべきだ」という意見が出ることがあります。しかし、観光人材の不足やDXの観点からも、すべての施設で人を常駐させることは残念ながら現実的とはいえません。だからこそ、規制だけでなく、デジタル技術を組み合わせながら運用面を改善していくという考え方も重要になります。そのうえで、不正な事業者には罰則を科し、必要な設備や仕組みへの投資を行い、適切な運営を行っている事業者が守られる制度設計を考えていくことが重要ではないでしょうか。

なぜ民泊は賛否が分かれるのか──社会で求められる理由と役割

■民泊は異なる立場の利害が交差するため、評価が分かれやすい

民泊は、観光振興や地域経済への貢献が期待される一方で、住環境への影響を懸念する声もあり、立場によって評価が分かれやすい分野です。観光・住宅・地域経済といった複数の領域が関わるため、メリットとデメリットが同時に存在し、議論が二極化しやすい構造があります。また、ごく一部の違法事業者や、騒音・ゴミなどのトラブルが注目されてしまうことから、「民泊=問題」という印象が広がりやすくなっている側面もあります。しかし実際には、民泊にはさまざまな活用方法があり、その利点を評価する声も多く聞かれています。

■民泊がゲスト・ホスト・地域/自治体それぞれに必要とされる場面

民泊は、観光客の宿泊施設というイメージが強いかもしれませんが、実際にはさまざまなシーンで活用されています。また、ゲスト、ホスト、地域・自治体といったそれぞれの立場からのメリットも多い手段です。● ゲストにとっての役割民泊は、大人数での家族旅行や長期出張など、ホテルでは対応しづらい柔軟な滞在スタイルを実現できる点が評価されています。転居前後の仮住まいといった、普段の生活に近い環境で滞在できる点も特長です。● ホストにとっての役割ホストにとっては、空き家や住宅資産を活用できる手段として有効であり、維持費の負担を補う収入源にもつながります。特に人口減少地域では、空き家活用の選択肢として役立っています。● 地域・自治体にとっての役割空き家や古民家など既存住宅を活用することで地域の観光資源を拡張し、宿泊不足の解消や分散観光の推進に寄与します。さらに、災害対策として活用できる点は自治体にとって大きなポイントです。政府では災害時にホテルや民泊などを活用する際のガイドライン(※6)を整備しています。実際に能登半島地震では、Airbnbの民泊が被災者や支援者の宿泊先として活用された事例もあります。このように、民泊はゲスト、ホスト、地域・自治体といったそれぞれの立場において多様な価値を持つサービスです。※6 内閣府「災害時においてホテル・旅館等を避難所として活用する際のガイドライン
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実態に即したルール設計で民泊の可能性を広げる

民泊の安心・安全性を高めるために重要なのは規制の強さそのものではなく、制度の目的に沿った形で実効性を高めていくことです。例えば、段階的なペナルティを設けることや、実際に執行できる形で制度を設計するなど、現実の運用を踏まえた仕組みづくりが求められるのではないでしょうか。そのうえでAirbnbとしては、ホストとゲストの双方が、それぞれの生活スタイルに合わせて民泊を活用できる環境を支えていきたいと考えています。住宅資産を活かして収入を得ることや、柔軟な滞在スタイルを実現することなど、民泊が持つ可能性を活かせる環境づくりを目指しています。こうした考えのもと、Airbnbではプラットフォームとして、例えば次のようなさまざまな取り組みを進めています。
  • 訪日外国人に伝えたい地域ルールや生活マナーの情報発信
  • ホストコミュニティの形成やワークショップの開催
  • ホストをサポートする「補助ホスト」の仕組みの構築
  • 地方・都市を問わず各地を訪問し、自治体や地域関係者の声を直接聞く活動
  • 自治体との連携による地域プロジェクトの推進
このような取り組みを通じて、特定の地域に偏らない多様な現場の情報を蓄積し、地域ごとの状況を踏まえた民泊のあり方を考えることを重視しています。例えば、これまでに愛媛県興居島での地域活性化の取り組みや、大阪で実施された「Osaka Morning ~商店街で朝食を~」プロジェクトをはじめ、民泊を活用した地域連携の事例も多数生まれています。
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民泊制度をめぐる議論には、行政だけでなく業界団体も関わっており、JAVRなどが制度整備に向けた提言を行っています。Airbnbとしても、こうした議論に参加しながら、ホストやユーザーのコミュニティを支え、地域と共存する持続可能な民泊の仕組みづくりに引き続き取り組んでいきたいと考えています。
※本記事の内容は、2026年3月10日時点の情報に基づいています。最新の法令や自治体の運用状況については、公式情報をご確認ください。
Airbnb Japan 株式会社

Airbnb Japan 株式会社執行役員 公共政策本部 本部長大屋智浩

2016年にAirbnbに入社。ホストコミュニティによる「ホームシェアリングクラブ」の立ち上げ支援などを担当した後、現在は公共政策チームで、自治体・政府との渉外やロビイングを担い、規制緩和を含む公共政策分野に携わる。

Airbnb Japan 公共政策の取り組み

A person seated on a green couch holding a pair of red and black keys, with another person standing nearby wearing black pants and white sneakers on a hardwood floor.

テクノロジーと厳格なルールで守る安全

法令順守はもちろん、予約スクリーニングや予約を行う全ユーザーの本人確認、24時間対応のサポート体制を通じ、地域社会の平穏と安全を最優先に守ります。
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ホストが自宅の玄関先で訪問者と握手し、Airbnb Japanの公共政策の取り組みを象徴している場面

平時から備える有事の際の社会的なセーフティネット

自治体と連携協定を締結し、大規模災害発生時に被災者や支援者へ一時的な避難先を提供するプログラムを展開。平時から緊急時に備えた協力体制を構築しています。
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japanese host

官民連携による市場の適正化

業界団体と連携し「統合型管理システム」の導入や実効性のある法執行を提言。ルールを守る適正な事業者が評価され、違反行為が起こりにくい仕組みを整えることで、公平で透明性の高い市場環境の実現を目指しています。
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japanese house

空き家活用と分散型観光の推進

地方の空き家や古民家を宿泊施設として活用し、都市部から地方への人の流れを創出。Airbnbのプラットフォームを活用することで観光の恩恵を全国に行き渡らせ、地域経済に直接的な潤いをもたらします。
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連携に関するご相談・お問い合わせ

自治体・公共団体の皆様へ地域活性化・観光振興に関する連携

持続可能な地域活性化や空き家対策、関係人口の創出に向け、全国の自治体や団体の皆様と対話を重ねています。イベントへの出展や勉強会の開催などを通じ、地域の皆様と共に解決策を考えます。
最新の事例や活動について

企業の皆様へAirbnb Partners(企業包括連携)

Airbnb Partners は、Airbnb Japan 株式会社が立ち上げたビジネスコミュニティです。2018年に発足、現在は185(2025年3月現在)の企業・団体が参画しています。国内の多種多様な企業や団体によって、ホームシェアリング市場の成長を目指すとともに、コミュニティから生まれる新たなアイディアを実現すべく協業・連携し、日々活動しています。
企業連携・Airbnb Partnersについて
Airbnb Japan公共政策本部へのお問い合わせは、pjapan@airbnb.comまでご連絡ください。